ネットリサーチの歴史!過去と比較して変わったところとは

ネットリサーチの歴史!過去と比較して変わったところとは

ネットリサーチの変遷

ネットリサーチはインターネットの存在が前提となるため、比較的新しい調査の手法であると言えます。そしてインターネットの在り方はここ20年で大きく変化しており、その期間中にも大きく変遷しています。以下ではどのようにネットリサーチが変遷したのか、過去と比較しながら紹介していきます。

ネットリサーチが開始された時期

ネットリサーチが開始されたのはインターネットの普及が始まる頃ですので、1990年代後半です。ただしこの頃は今と環境がかなり違うため、インターネットを使ったリサーチには批判の声もあったようです。その最も大きな要因は、モニターがインターネット利用者に限られるということです。これは今でも言われていることですが、現代では高齢者の方でも利用率が高まってきており、一般的な調査方法にもなっています。しかしかつてはほとんどの人がインターネットを利用していないという状況から始まっていますので、当初は精度の高い調査結果を得るのが難しかったと考えられます。そのため限られた領域の調査しかできない状況でした。

ネットリサーチの現在

ネットリサーチが用いられるようになった当初は特殊な調査手法と捉えられていたため、インターネット普及と同時期にネットリサーチをしていた会社の多くは失敗に終わっています。しかし現在ではマーケティング含めリサーチはインターネットを媒介とするのが普通になっています。インターネットの普及率が10倍近く上昇し、若者に限ればほとんどの人がインターネットを利用して生活をしています。さらにデバイスのバリエーションも増え、PCだけでなくスマホやタブレットなども登場、いつでもインターネットが利用できるようになっています。そのためネットリサーチによるモニターの偏りも昔より小さくなってきています。

ネットリサーチの初期の頃の予算などを含めた、状況

当時の主流だった調査方法

ネットリサーチが始まる前は、マーケティングリサーチと言えば「電話調査」や「郵送調査」、「訪問調査」でした。そのため人件費が多くかかり、各工程にかかる負担も非常に大きなものでした。例えば訪問調査では調査員が直接モニターの家に訪問し、アンケートを行っていました。しかし個人情報の保護が重要視されるようになり、この手法を続けることは困難となります。電話調査でも詐欺被害の問題が出てくることで、これを主流に調査を行うことが難しくなってしまいます。社会の状況に応じてリサーチの手法は変化しており、インターネットの普及という変化がやってきたことをきっかけにネットリサーチも利用率が高まっていきます。ただし当初のネットリサーチは現代ほどのバリエーションはなく、複雑なスクリーニングをするほどのモニター数もおらず、できることには限りがありました。

インターネットの普及率

インターネットの利用者数は1990年代では1000万人程度しかおらず、普及率も10%未満です。しかし2000年になれば5000万人近い利用者数になり、普及率も40%近くにまで上昇します。現在では1億人ほどが利用しており普及率も80%ほどに達しています。

ネットリサーチを行うのにかかるおおよその費用

ネットリサーチにおける費用は、設問数とモニター数で決まってきます。具体的な料金設定に関しては各リサーチ会社によって違いますが、多くは「基本料金」+「予備調査料金」、これに「オプション料金」を加えた金額となります。予備調査はスクリーニングのことです。
例えば設問数5問を100サンプル分回収すれば3~4万円程度の費用が目安となってきます。これに対し設問数10問、サンプル数は同じく100とすれば4~5万円ほどとなり当然費用は上がってきます。ただしサンプル数が増えてくると集計にもより時間や労力がかかるため上がり幅も大きくなることが想定されます。設問数10問200サンプルの場合だと7~10万円、これを目安と捉えるといいでしょう。

ネットリサーチ業界の歴史の中での出来事

郵送や街頭調査の企業がネットリサーチを始める

リサーチ業界はかつて郵送等による調査が主流でした。もしくは街頭調査などです。しかし調査をインターネットでできるようになれば多くのメリットが得られるため、インターネットが普及するとともに、徐々にリサーチ業界の企業もネットリサーチを始めるようになります。
なにより、回答をしてもらってから集計までにかかる時間がかなり短縮されるという良さがあります。しかも労力も削減できるため低コストで済みます。郵送だと集計結果を得るまでに1か月以上かかることも珍しくなく、十分なサンプル数を確保しようとすれば数百万円かかっていました。ネットリサーチだとこれが数日で済みますし、コストも数万円程度から始められます。他にも、回答画面が自在にカスタマイズしやすいこと、モニターの抽出がしやすいこと、モニターの回答から提出までの負担が少ないなど、様々なメリットがあります。

大手の登場

インターネットを多くの人が利用するようになり、ネットリサーチが伸びてくる中で、大手のリサーチ会社も現れてきます。有名どころで言えば「マクロミル」や「クロス・マーケティング」、「インテ―ジ」などです。マクロミルやクロス・マーケティングは2000年代に設立されたベンチャー企業ですが、市場調査業界では数少ない上場企業の一つです。インテージは1960年から活動している老舗の企業です。
この他にもネットリサーチを扱っている企業は多くありますが、調査ではモニター数が重要になってくることが多いため、これらの大手が強いという現状があります。

現在の最新情報

ネットリサーチの市場規模は2002年では100億点ほどだったのが、10年間で5倍ほど伸びており社会情勢の変化を体現していると言えるでしょう。しかしながら市場調査業界自体が伸びているわけではありません。そのためネットリサーチは相対的に見てもかなり伸びてきている分野であると言えます。

ネットリサーチの初期から現在までの変化

最後に、ネットリサーチが始まってから現在までで、どのような変化が起こったのか紹介していきます。リサーチ会社側の問題や、新しいデバイスの登場が大きな変化と言えます。

回答する機器

ネットリサーチにだけ着目しても、ネットリサーチが登場した当初から比べて色々と変わっているところがあります。一つは回答する機器の変化です。インターネットが普及し始めた時代でもアンケートに回答するためにはパソコンが必要でした。その当時は今ほど携帯電話が普及していなかったため、インターネットで情報のやり取りをするためにはパソコンが必須でした。しかしここ10年でスマホが急激に普及し、多くの人が常に機器を持ち歩く状況になっています。パソコンの利用も少なくはありませんが、手軽にスマホがあればたいていのことができるようになっているため、プライベートに限ればパソコンの利用率は減っていると見られます。
こうした回答機器の変化を受け、ネットリサーチでもスマホで回答することを念頭に回答画面が作られるなどの工夫がなされています。
実際、2013年にはスマホによる回答者が15%でしたが、たった3年後にはスマホの回答者が35%にまで増加しています。20代に限れば過半数がスマホで回答するほど変わっています。2020年現在ではさらにスマホの割合が増加していることが考えられるでしょう。

アクティブ回答率

ネットリサーチ業界自体は伸びてきているものの、アクティブ回答率は下がってきているようです。アクティブ回答率とは簡単に言えば高頻度で調査に回答してくれる人の割合です。その要因としてスクリーニング調査の負担が増えてしまっていることが挙げられます。質問内容の実体を見てみるとこの10年で質問数に変化はないものの、スクリーニング調査での質問数が2倍近く増えていることが分かっています。より細かく条件付けてモニターを絞ろうとしていることや、本来本調査で行うべき質問をしてしまっていることが原因です。スクリーニングは本調査の1割ほどに抑えるのが理想ですが、この質問数が増えてしまうことでモニターにかかる負担は増えてしまい、回答者のアクティブ率低下に繋がっていると考えられています。
さらに、アクティブ回答率を下げている要因として調査票の設計が関係しています。ネットリサーチにおける調査費用を抑えるためには様々なテクニックがあり、企業側からすれば低コストで調査が実施できるため喜ばしいことかもしれませんが、その結果できた調査票は回答者側から見て回答しにくい内容になっていることがあるのです。調査票は設計後、モニターにとって回答しやすいかどうかチェックは行われますが、最終的に発注者が聞きたい内容が詰め込まれてしまうことも珍しくありません。

回答画面

スマホの利用率が増えてくるにつれ、ネットリサーチの回答機器もパソコンからスマホの割合が増えてきます。そのためディスプレイが小さくなっても回答のしやすい調査票設計が欠かせなくなります。まず表示できる情報がかなり減りますし、回答フォームに入力するのも、マウスやキーボードが使えませんので文章量は少ないほうがモニターのストレスも少なくて済みます。
実際、スマホやパソコンはその利用目的によって使い分けられています。例えばショッピングや情報収集などを目的とする場合ではパソコンが使われることが多く、一方で暇つぶしにするゲームや移動時のナビ、コミュニケーションの場合にはスマホの利用が増えています。特にSNSを誰もが使うようになり、ゲームアプリも登場することで空き時間のスマホ利用率はかなり増えてきています。じっくりと何か作業をしようという時にはパソコンを使うことが今でも多くありますが、スマホでできることもますます増えており、全体の傾向としてはやはりスマホが優位になってくると考えられています。ネットリサーチにおいてもこうした回答機器の変化に適用し、回答画面の設計を検討することが求められています。