「日本企業の統合報告に関する調査2019」を発行

「日本企業の統合報告に関する調査2019」を発行

企業の「統合報告書」という言葉をご存知でしょうか。これは、財務データ(定量的データ)と、その企業の強みである知的資産(定性的データ)の両方の観点で作成された報告書のことです。
会社は毎年決算報告をしますが、これは「財務データ」にあたります。売上、利益などのPL情報、現預金、純資産などのBS情報から成り立っていて、経営状況を表すのにとても重要な指標です。ですが、これはあくまで過去の情報であって、今後の見通しを判断するのに十分なものとは言い切れません。その見通しを測るための指標が「非財務データ(知的資産)」です。経営者の有能さや今後のビジョン、従業員の技術力の高さ、取引先の優良さなど、決算書には現れない資産と言えるものです。ただ、いくら今後のビジョンが素晴らしくとも現在の資金がゼロであれば良いとは言えません。この2つの指標を合わせた、現在そして今後の企業の姿についての報告書が統合報告書なのです。当然これを重要視する投資家もいるでしょう。

調査概要

(以下、KPMGジャパンによる独自調査レポートから抜粋。)

KPMGジャパン(本部:東京都千代田区、チェアマン:森 俊哉)は、2020年3月27日、「日本企業の統合報告に関する調査2019」を発行しました。 2014年の調査開始から6回目となる今回の調査では、統合報告書の継続的な調査・分析に加え、有価証券報告書の記述情報についても調査を実施し、統合報告書における開示との比較を行った上で、それらに対するKPMGジャパンからの提言をまとめています。主な調査結果は、以下のとおりです。

調査レポート目次

調査レポートまとめ

日経225構成銘柄における統合報告書発行企業の割合

2019年に統合報告書を発行した企業等513社のうち、日経225構成企業は175社でした。これは、日経225の全構成銘柄の78%にあたります。東証1部全体で見ても、統合報告書の発行企業の時価総額は66%を占めるまでとなりました。統合報告書の発行そのものが進み、投資家等との対話においてより有用性の高い報告書の発行が期待される段階に移行してきたといえます。

マテリアリティとは、ビジネスモデルとその成果に大きな影響を与え得る事象の「重要度」という意味合いを持ちます。企業の価値創造ストーリーの土台となるマテリアリティの認識を、ビジネスモデルの持続性の観点で示しているのは、有価証券報告書では8%、統合報告書では28%にとどまり、そのうち、取締役が主体的にマテリアリティ評価に関わっていることがわかるのは、有価証券報告書では0%、統合報告書では21%と少数でした。経営判断の核たる情報を、経営目線を反映したものとして示す点において課題があります。

戦略の達成度の説明に用いられた指標の種類を調査したところ、財務指標のみを用いている有価証券報告書が66%であったのに対し、統合報告書は32%でした。一方で、財務・非財務の両方の指標を用いた有価証券報告書は15%、統合報告書は37%という結果でした。経営成績を測る指標として財務的な成果が重視されるのは当然ではあるものの、財務成果に影響を与える非財務指標の動向を踏まえた説明には、いずれの報告書においても改善の余地があります。

調査方法

*調査対象期間
2019年1月~12月
*対象企業
・ 統合報告書の発行企業および統合報告書に関する基礎情報の調査:「自己表明型統合レポート」を発行する国内の企業等512社
・ 統合報告書の領域別の記載状況に関する調査:日経225構成企業のうち統合報告書を発行する175社
・ 統合報告書と有価証券報告書の記述情報の開示状況の比較調査:日経225構成企業225社
*調査方法
調査メンバー全員で判断基準を定めた上で、企業ごとに1人の担当者が、統合報告書、有価証券報告書の両方を通読し、確認する方法で実施
*協力
企業価値レポーティング・ラボ(「自己表明型統合レポート発行企業等リスト2019年版」提供)

調査元

KPMGジャパンは、KPMGインターナショナルの日本におけるメンバーファームの総称であり、監査、税務、アドバイザリーの3つの分野にわたる8つのプロフェッショナルファームによって構成。
https://home.kpmg/jp/ja/home.html

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