理想的な価格はいくら?「買い物代行サービス」を例に最適な料金を考える

サービスの料金を決めるためにリサーチを利用する方法をご紹介します。ここでは「買い物代行サービス」の料金について検討している場面を想像してみてください。

 

値決めの難しさ

何かしらの商品の価格を決めたことがある方はわかると思いますが、「売値をいくらにするか?」は非常に悩ましい問題です。

モノやサービスの値段を決めようとすると必ず出てくるのが、

  • 自社の利益を確保できる価格で売りたい
  • かといって強気の価格にすれば売れないかもしれない

といったジレンマです。

また、必要以上に安価にすれば今度は品質を疑われて売れなくなる可能性もあります。

これらのバランスをとる難しさ、これが値決めの難しさと言えるでしょう。

 

アンケート調査でできること

高過ぎず、安過ぎず、ちょうど良い価格帯を探るにはどうすればよいか?

そのような悩みに応える方法として、「PSM分析」というアンケート調査の手法があります。

PSM分析を使うと、買う人から見たときの価格の下限〜上限がわかります。また、その範囲内にある理想的な価格や、妥協して買える価格の理論値を算出することができます。

自身の思い込みではなく客観的な意見をもとに料金の幅を考えることで、的外れな値決めをしてしまうリスクを減らすことができます。

 

PSM分析のやり方

インターネットリサーチでPSM分析を行うときは、以下のような手順で実施します。

< PSM分析の手順 >

  1. 調査票にPSM分析用の設問を含める
  2. 回答データを一覧表におこす
  3. グラフ化して分析する

 

1. 調査票にPSM分析用の設問を含める

PSM分析用のデータを取るため、アンケートに以下のような設問を含めておきます。

  1. 買い物代行サービスについて高いと感じ始める価格はいくらからですか?→
  2. 買い物代行サービスについて安いと感じ始める価格はいくらからですか?→
  3. 買い物代行サービスについて高過ぎて利用しないと感じる価格はいくらからですか?→
  4. 買い物代行サービスについて安過ぎて利用しないと感じる価格はいくらからですか?→

web画面上での見せ方としては、この例のように価格入力欄(テキストボックス)を4つ並べて1問とするか(※)、それぞれ別設問として4問を回答してもらいます。

また、ネットリサーチ会社によっては1〜4の価格の大小関係に矛盾が起きないような制御をかけることもできます。

※)リサーチ会社の料金カウント上は4問扱いになる可能性があります。

 

2. 回答データを一覧表におこす

アンケート実施後、集まった回答データについて「価格」×「回答割合」を表にまとめます。

 

表1 買い物代行サービスに対するアンケート結果
100円 200円 300円 400円 500円 600円
高いと感じ始める価格 0 12 25 41 92 100
安いと感じ始める価格 100 86 50 13 2 0
高過ぎて利用しない価格 0 0 3 22 76 100
安過ぎて利用しない価格 100 72 19 0 0 0

表で全体の数字を眺めると、左から右へ行くに従い価格が上昇していき、それに応じて(その価格を)高い/安いと感じる人が増えて/減っていく様子が確認できます。

 

3. グラフ化して分析する

より視覚的にわかりやすくするため、表1のデータをもとにグラフを作ります。
今回はExcelのグラフ機能を使います。

 

【STEP1】Excelに表を作成して、グラフ作成用のボタンを押します。

PSM分析_STEP1

 

【STEP2】「次へ」をクリックします。

PSM分析_STEP2

 

【STEP3】必要に応じてグラフのタイトルや項目軸の名称を入力し、「次へ」をクリックします。

PSM分析_STEP3

 

【STEP4】「完了」をクリックします。

PSM分析_STEP4

 

【STEP5】表1のデータをもとにしたグラフが出力されます。

PSM分析_STEP

 

【出力結果】

PSM分析_結果グラフ

こちらは出力したグラフを拡大したものです。

グラフ中の「高過ぎて利用しない価格」と「安過ぎて利用しない価格」が交差する点での価格が、理論上の「最もバランスがとれた理想的な価格」で、理想価格(最適価格)と呼ばれます。

この理想価格(最適価格)であれば、値決めによる失敗リスクは低くなると考えられます。

妥協価格は高いと感じる人と安いと感じる人が拮抗する点で、「この金額だったら許容範囲」という価格です。

また、下限価格を割り込めば品質に不安を覚えるなど「安いことが売れない原因になる」リスクが高まります。反対に上限価格を超えると「高くて売れない」リスクが高まります。

 

今回の例は「買い物代行サービスの料金をいくらにするか?」ですが、もしこのような分析を行わず「直感で500円」といった決め方をしていた場合「高くて利用されない」という結果になった可能性が高いと言えます。

PSM分析の結果を見て金額を決定すれば、”顧客に受け入れられる価格設定”に失敗する可能性は低くなると言えるでしょう。

 

リサーチャーの力を借りる方法も

PSM分析は手順を知っていれば誰でも実施することができますが、

  • 正しく回答データが取れているのか?
  • 分析の仕方に問題は無いのか?
  • アンケート結果をどう考えたら良いのか?

といった悩み・迷いが出てくることも考えられます。

このようなとき、もしリサーチの専門家がパートナーになって手助けしてくれるとしたら心強いのではないでしょうか。

アンケートの実施だけでなく「調査設計や分析・レポートまで含めてリサーチ会社に依頼する」という方法もありますので、場合によってはそのような方法もご検討ください。

 

◎参考(外部サイト)

以下の総務省のサイトにPSM分析についての詳しい解説が載っていますので、興味がある方はご覧になってみてください。

なるほど統計学園高等部